[ フェリクス殿下、と告げたとき
あからさまに眼前の身体が震える。>>14
それをじっと見遣って、
彼の兄の禍々しい哄笑を思い返した。
…きっと、気付かれていなかった。>>15
あの場に密かに居たのだということは。
彼の兄の深い憎悪に対して
ローレルが抱いた感情も。
…もう隠しておくことは出来ない。
伸びた指の先が知らずのうちに皺を生む。 ]
――――… きみの、
[ 言いかけて、
罅割れた紙の上から指先を引く。
じりじりと身を焦がすような
果てのない後悔と虚無の
伝わってしまわないように。
苦々しい表情を一瞬、昇らせては消す。 ]