――食堂の一角――
[さわさわと。賑やかな人の声はそれぞれを聞けば意味を持つ言葉になる筈ではあるが、たくさんになってしまえばその意味など濁流に飲み込まれるように意味をなさなくなる。
食事を終え、読みかけの本を背表紙を上にテーブルに伏せたまま、心地よい人の声の流れを聞きながら行儀悪く頬杖をついて睡魔に身を任せていると]
「お前こんな所で寝るなよ!寝るなら部屋帰れよ」
[突然かけられた声に眠りを中断され、まだ眠そうに顔を上げれば士官学校時代の友人の姿がみえた]
……人がいた方が、眠れるんだよ。仕方ないだろう。