[ヤコブへは短く”嗚呼。”とだけ答えて会話を終わらせる。
もし内心の疑問を、「できるなら見せたくなかった」という言葉はためらいがあるから出たのではないかと直接言われていたとしたら、微妙に違うと首を横に振るだろう。
自分としてはためらいは”ある”というよりは、”思い出した”感情と表現した方が正しい。]
「人に手にかけることで、命を奪われた者を大切に思う誰かが悲しむ。お前はそう言うが、そんなのは只の感傷だ。そんなことのために仲間の足を引っ張る奴は、今すぐ此処を出て行け。
それにいいか。戦場は常に死と隣り合わせの世界だ。一瞬のためらいが命取りになる。
強くなれ。死にたくなければ。殺されたくなかったら。」
[同じ年頃の仲間が初めて人の命を奪って衝撃を受けていたとき、部隊長からかけられた言葉は今でもハッキリ思い出せる。
自分は焼きが回ったと反省すべきなのか、それとも一応人間の心が残っていたと歓迎すべきなのか。正直微妙に思っている。]