― ディーターの部屋 ―
[朝。出迎えたお前は何時もの軽口で
それが泣きたいくらいに嬉しい悲しい>>13]
フリーデルが、部屋にいない
……探しに行くのも。俺はできない
[見たくない、聞きたくない――認めたく、ない
その思いをすべて、強引に心の中で千切り落として
笑って、酒瓶を差し出した]
約束の酒、持ってきた。約一名は不在だけど
お前とさしで飲みたい
[酔わなければ言えない、ことがあった
ああ、頭なんてよくなきゃよかった
狼の掌の上で転がり続ける道化なら、よかった
お前がこんな時まで優しいから。
強がる己の姿すら――嘘になってしまいそうだ]