[あ、拙い。
眼前に迫る腕を認識した時にはもう遅い。
アドレナリンが出ているのか、時間がコンマ単位でページを捲るようにゆっくりと進んで見えるが。その体は一切反応を許してくれない]
きゅ、
[小さく悲鳴のように啼いて、金糸雀は壁にたたきつけられた。
内臓に重圧がかかって潰れるような、なにか嫌な音を聞く。
それきり金糸雀の意識は薄れる。
スローモーションのようにふわりと地面に落ちれば。
小鳥の体の何処から落ちたものやら、
濃紫色の花が、金糸雀の傍らに献花のようにこぼれ落ちた。
時間が経ってすこしだけ萎れ、僅かに花弁に血痕が付いているものの。それは紛うことなく、杜若。]