―2日目・AM9:30・第五訓練場―
だって、あんなのただの談笑だろ。
社交場で交わされるような、見栄と、打算と、誇示に塗れた自慢話や駆け引きなんかより、ずっと単純な会話なのに。
肩の力を抜きなよって言われることの何がそんなに不快なの?
[あっけらかんとしてそう言い放ちながら、笑顔のままこちらもまた相手>>14を観察していた。
経験則に基づけば、自分に敵意や嫌悪感を抱く人間はその感情を露わにしこそすれ警戒はあまりしない。警戒心を抱くのは、恐怖を感じていたり、隠し事をしていたりする場合だ。
質問への答えはいかにもそれらしい内容だった。
親からは『その兆候も無く突然子供が出来ていた』『家督は他の者が継ぐらしい』という情報しか与えられていない。昨日の"談笑"が無ければ信じていただろうが、今はわざとらしく首を傾げた]
たしかに、有り得ない話じゃないね。
でも矛盾だらけだ。
そんなに大切にされていたのに、家督を他の子に奪われて、死亡率の高い職を勧められちゃうなんて……君、親でも殺そうとしたの?