[扉に手をかけた途端、ものすごい力で中に引き入れられ扉が閉められる。]
……っくっ……
[夜目が効くはずなのに何も見えない。ただ、バランスを崩した体は暗闇の中で這いつくばることしかできない。
首筋にかかる指、そして吐息に背中が粟立つのを感じた。]
……っはぁ…ぁっ……さまっ……!!
[直後首筋に突き立てられる牙の感触は、元老吸血鬼のものだと分かる。
先刻兎に噛みちぎられた腕の疵も癒えきらぬうちの吸血になすすべなく、目をかたく瞑り、この時間がすぎるのを耐えるしかない。
自身の血を吸う吸血鬼の名を紡ぐこともままならず、荒くなる息をなんとか堪えようと歯を食いしばる…――]