[幾つか置いてある中で、一番日当たりのいい場所に位置するソファーは男の定位置だ。
暇があれば其処に寝転がっているが、寝顔を見せる事は少ない。
無防備に素顔を晒す事を男は好まなかった。]
…いよいよ明日か。
‘暁月夜’。
[いつもと変わらぬ一日。
けれど窓から見える空の雲行きは怪しい。
濃紅色をしたワインを口に含みつつ浮かべた少し苦々しげな表情は、普段から親王子派の態度を取っている男を知る者から見れば不思議に思われるかもしれない。
そう、男の立場からすれば数十年に一度のそれを賀すべきなのだ。
時に王子と友人のように言葉を交わし、時に従者のように共に在る男にとっては。]