―広場のパン屋―
[店内の暖を刺し殺すかのように、冷酷な殺気を帯びた風が入り込んでくる。そう。これは冬の息吹だ。これまでの季節を殺して、白銀の世界へと塗りつぶす。これは、冷徹な侵略者の、季節の足音だった]
ふむ……。今年もこれくらいで、蓄えは十分だろうか。
[呟いた声は行くあてもなく、隙間風に晒される。蓄えは十分だが、しかし、この隙間風は何とかしないといけない。きっとこの状態を、お客は望んでいない]
何か、隙間風を防げるようなものはあっただろうか。
[店内に並ぶパンに対して写真を眺めるかのような視線を向けると、店の奥へと入っていくのだった。今日もお客には「期待通り」を届けなければならない]