……まだ、来ないの?
[ぽつりと零す言葉とため息。
待ち侘びていたのは、もちろん大好きな幼馴染のこと。
折角の礼装を一番に見てもらいたかったのに、遅い]
何かあったのかな、心配だな。
事故にあったり、変な人に絡まれたり、
マダムに誘惑されてたり、してないかな……。
[傍らでは執事が失笑していた。
来客たちの挨拶のターンを抜け出して、
窓辺で悶々としていればあらぬ妄想が募る。
いつだって彼のことが気になって仕方がない、
特に――“あの日”からそれは顕著になった]
ちょっと迎えにいってく――……る?
[窓ガラスに映る不穏な影を見たのは、
ちょうど身を翻しかけたその瞬間――]