[幼い頃に発症してすぐに同じ感染者であった父に薬を飲まされたため残っているのは本能的に何かを欲していた感覚のみだ。だからか、発症した事への悲観は薄い。今は呼び起こされた記憶に酔っているだけなのかもしれない。いつか自らの未来を恐れ怯える日がくるのかもしれない。だけど今はそれでいいと思うのだ。存在するはずの心臓が抉られたかのような感覚に苛まれる事もずっと何かを知りたいと求めていて、なのにそれが何かすら分からないままでいる事もなくなったから。]