[喉が、渇く。渇きすぎて首筋を掻き毟る。
長く伸びた爪が、喉元へ幾重もの赤い筋を、つくる。
爪に付着した血を舐め取ったのは半ば無意識のことだった。]
……ああ…、甘…い…、
[脳の芯がじん、と痺れるような陶酔感がそこにあった。
自分の血では足りない、そう感じた瞬間に、はっと我を取り戻す]
まさ、か……
[白を好んで着ていたのは、
黒髪の所為で暗い感情に囚われぬ為だった。
今も寝巻きに白いガウンを着ていたけれど――
鏡の中の自分の髪はもう、黒くはなかった。
燃えるような赤い髪へと変化していた。
目も、煌々と赤く、鋭く鏡の中の――吸血種を、見つめていた]