[20年前もそうだった。
最初は些末な親子喧嘩だったはずなのに、怒りに興奮した男は人狼化し、養父を食らおうと襲い掛かった。
殺害するまでは至らなかったが、自分の爪は、牙は。
養父の腕に、皮膚を引き裂く程度とはいえ、怪我を負わせた。]
[人狼と知ってて育ててくれていた父親だった。
1人の“人間”として生きられるように、剣術や生活の知恵など教えてくれる人だった。
喧嘩をすることはあれど、嫌いではなかった。
それなのに怪我を負わせてしまったのだ。
恐怖 罪悪感
色々なものが襲ってきた。
それと同時に、過ぎった思考は理性なのか、本能なのか。
どちらにせよ、男の中で1つの結論に達した。
“逃ゲナケレバナラナイ”
そうして、今度は父親から逃げ出した。]