「そうか……。
なら、中学は女子校へ進むかい?
例えばこの学校なら、生徒だけでなく教員も校長も全員が女性だ。
受験までもう間もないが、詩奈の学力なら問題なく合格できるだろう。
混んでる電車で痴れ者の心配をするのが嫌なら、家政婦に車で送り迎えを……」
「あなた!
……私や詩奈へ、実の家族同然に接してくれる事は嬉しく思っています。
ですが、いくら何でも甘やかしすぎです!」
「同然ではない、家族なんだ。
それに、甘やかしたつもりはないよ。
普段、我儘の一つも言わない詩奈が、攻撃的になるほどのストレスを抱えている……
その要因を、私は除去してあげたいんだ。
親として、できる事はしたいからね。」
[詩奈の向かいのソファで、母は呆れ顔を、“父”は笑みを詩奈へ向ける。
けれど詩奈はどちらとも視線を合わせる事はなく、“父”がぽんぽんと優しく頭へ手を置いても、物言わぬ人形のようにただじっと俯いていた。]