― 銀嵐の中 ―[緩んでいるとは言え、銀嵐の灰色とも思える白い雪が白い狼の身体を覆っていく。周囲に広がる赤錆の色は雪に染みて、最期の場所を知らせるだろう。雪は音を吸う静寂の支配者の筈なのに。何処からか聲が聴こえた気がした。数日前に知り、数日前に絶えた聲達。互いを呼び合う秘名に己の名前は無かった。突き離し、袂を分かつ為に口にしなかったが、何処かで寂しくも思っていたかもしれない。秘名が絆の様に繋がる様に思えたから。強風で震えた顎が何かを綴る]