かの国がどうなったのか、
文献を漁れば――あるいは人に聞けば
結末は苦労せずに見つかるはずだ。…でも、
争乱の渦中に居た者の言葉は貴重だよ。
…きみが後世に正しく歴史を残したいと願うなら。
[ 言葉を受けて頷き返す。
歴史を正確に残そうという者は
今の時代、まだ多くはない。
未だ年若い歴史学者は
自分こそが正しい歴史を、と
情熱に燃えていた。
そんな自分を見遣る人のことが気になって
若者は不思議な風体の旅人に尋ねた。
『 あなたはあの国とどんな関係が? 』
答えが返るまで、一寸の間が空く。
何か不味いことを聞いてしまったのかと
動揺を抱いた頃、ようやく相手の声が耳を衝く。 ]