[ 出来上がりを待ちながら、展望ラウンジへと視線を向ける。
ミゼーア= スロダン・ィ・テのジャンプ・アウト地点には、そろそろ到着したころだったか。
それなら、外の景色は是非見たい。
本当はあちらで食事と洒落込みたかったのだが、飲食スペースの区分は守らなければいけないから、また後で見に行こう。
星を見るのは好きだ。
星に向かって進んでゆくのも好きだ。
この船のことも、実に気に入っている。
暗く凍てついた闇の中、煌めく星々の合間を滑るように駆け行く銀の船をどのような言葉で例えたものか、詩心のない彼にはよく分からないけれど、“行く”ものはすべて好ましい。
少なくとも彼にとって、すべては帰り道ではなく、行く道だから。
砂時計の砂が、またひとつ。
さらさらと硝子の淵を滑りながら、留まることなく落ちてゆく。
それを待って、目で追って――… ]
………。
[ 表情を変えることもなく、一度だけ瞬きをした。
いただきまーす、と蓋を開ける。
銀羊号の船内の一画に、極めて庶民的で脂っこい、安っぽい香りがぷわー、と漂った。
なお、嘗ての地球の『インスタントラーメン』の名誉のために申し添えておくと、さすがにこのバッタものよりは良い香りがしていたはずだ。
麺をくるくるとフォークに巻きつけ(箸は使えない)、口へと運び、ずずー、と啜る。]