[ シグルドにとって惜しむらくは、二人が着ているのが伸縮性にすぐれた素材であったこと。
引っ張られても少しばかりの余裕がある。
シグルドの背に乗せられる形を取りながら、腕を彼の首に絡め、後ろへ引いた。
倒せたならば、喉を踏み抜く寸止めで終わりにしようという目論見だ。
堪えるならば引き手を切って離れたいところ。
さもないと、組み打ちになってしまう。
力で負けるとは思わなかったが、手足の長いシグルドは器用そうだ。
投げられたわけでもないのに、足元がふわりと揺れて、ここが海上であることを思い出させた。* ]