― 小6の秋 ―
「詩奈、ちょっとここに座りなさい。
今日、担任の先生から電話があったんだ。
運動会のダンスの練習で、詩奈と手を繋ごうとした男子を、突き飛ばしてしまったと。
何でも、以前から詩奈は男子全体を敬遠していたとか……。」
「詩奈、その男の子には謝ったの?」
…………。
[こくり]
「詩奈は、男子が苦手なのかい?」
…………。
[こくり]
[大きな邸のリビングにて。
ソファの上、詩奈と呼ばれた小さな少女は、向かいに並んだ中年の男女から次々に投げられる問いに対し、何も言わず、俯きながら頷いた。]