― 回想 ―
どうして!
[問いかけた所でもう『彼』には届かない
『異形化』それも「憑依体」は自我をなくしている、と、それを教えてくれたのも『彼』だった
『彼』の面影を残しながら、だけど『彼』の自我は既になく
目の前の男が誰かにも、もう気付くこともなく、『彼』はその腕をこちらに向け……]
……っ!
[咄嗟に、反射的に放ったのは異能……風の刃
加減がわからぬまま放たれたそれは『彼』を傷つけ
だけど、躊躇いのまま放たれたそれは致命傷を与えることはなく
向けられた『彼』の腕はこちらを弾き飛ばし、強かに背を打ちつけて呼吸が止まる
反撃をする余力は既になく、崩れかけた体を支えて『彼』を見返して覚悟を決めた時、聞こえたのは声と足音
その時、自分がなにを思ったかは覚えていない……意識が途切れてしまったから]