――……、自分は。
[跪いて、老人はとつとつと喋り始めた]
……あれから、電探の開発と配備に努めました。
事前に敵の規模が判れば、無駄な戦闘は起きないだろうってね……。
……まあ、甘い考えでしたね。
今じゃあ、ええ。水平線の彼方まで、誘導弾で攻撃するんだそうですよ。
この"びすまるく"も、あなたと私が乗り組んでた頃とは大違いだ。
ええ、そうなんです……はは、信じられますか。
この一万トンもない、精々がとこ軽巡くらいのフネが、ヴィスマルクだそうでね。
[水平線の彼方へ、寂しそうに眩しそうに視線をやって]
……あなただったら、なんというかな。
はは、いかんなぁ……五十年前なら、直ぐに言葉が浮かんできたのに。
[老人は、瞼を静かに閉じる。追憶が辿るのは、かつての――]