― クリーク砦 ―
[胸の傷を庇って前屈みになるため、サシャの肩を借りられるのはありがたかった。
あまりサシャを疲れさせないように気を使いながらも、心は急く。
と、サシャが素朴な問いを発した。>>1
伯父のことは、人に話さないようにしている。
どこで話が洩れて伯父の命を危険に晒すとも限らないから。
もはやラモーラルには居られないと、異郷へ旅だってからの居所はカークも知らないくらいだ。
だが、その名が思いも拠らないところから告げられた今、心は揺れる。]
ギデオンは俺の伯父貴で、先生。
母の兄だから、親父には似てない、クマっぽくない。
手先も器用で折り紙が上手くって──
15年前の政変がなければ、今も一緒に居られたはずなんだ…
いつか、サシャにも会わせられるといいな。*