[ポケットの中に入れているピルケースに触れる。
カスパルが感染者と診断されたのは何年も前で、その頃には記憶の意味も――かつての己が狼化病の発症者であろうと推理していたから、どうして運命は繰り返すのかと絶望を味わっただけだった。
なぜ、己だけだと思っていたのだろう。
カスパルの目が見開かれ、ドロシーの言葉の意味を僅かに違えて理解する。]
……狼になってから悔いても、戻れない。
発症しようなどと、馬鹿な事、は――。
[それを彼女は望むのだろうか。
苦しみ葛藤しながらも、血肉を喰らう快楽を、欲するのだろうか。]