―階下―[煙を吸い込んだ喉は、呼吸器官から強制的にそれを排出させる為に咳を生じさせる。失った空気を補う為に深呼吸をした男の瞳には正気が宿り。]は…。――カシム。カシム…!![男はよろよろと立ち上がると、緩慢な動きで息絶えたカシムに近付いて彼の身体を揺らす。つい先程まで話していた。無事に返したいと思っていた。それなのに。毒ガスなど気にする余裕はなく。幾ら揺らしても反応のカシムの名を呼ぶ男の声は枯れ、酷使された喉は悲鳴を上げていた。男の目には曹長の姿は入っていなかった。]