[宿屋はまだ、営業時間前。 玄関の扉が開けっ放しにでもなっていない限り、獣がここへ入ってくるわけはないのだが。] ま、いいか。 そこら辺走り回って迷惑かけるとかでなきゃ、歓迎だよ。 こんな天気でも、お客さんは来るかもしれないからね。 大人しくしてるんだよ。[まさか、こんな小さな存在が、御伽噺に出てくる“人狼”というやつでもないだろう。 熟睡しており起きる気配のない獣を尻目に、鍵を開けようと玄関へ向かうと――]