―50+XX年後―
――……ああ、これが、いまの"びすまるく"か。
[舷側を上る老人は、杖を突いてこそいたものの、足取りは確かだった。
老人の後ろを、その家族とおぼしき、老年の女性や壮年の夫婦、子供たちが順に艦上へ上がってくる]
……あれは、あの随分と小さいのが、主砲かい?
ああ、主兵装は誘導弾とは判っているが……排水量も巡洋艦くらいの、これがねぇ。
[若い士官の案内に従い、まじまじと艦上の兵装(>>2:-164)を眺める老人は。
おおむね八割の敬意と二割の粗略さで以って遇されていたといっていいだろう]
……それで。あの海域まではどの程度だね、少尉?
[――その回答を、訊くまでもなく。老人の脳裏には、潮風とともに鮮明な記憶が甦っていた]