[…は祭壇に向かって膝をつくと頭を垂れ、十字を切って祈りを捧げる。暫しの後に顔を上げて祭壇に奉られている聖櫃を見上げる。同時にステンドグラスから降り注ぐ光が目に入り、…は思わず目を細め顔を背けた。
そこに外の広場から、賑やかな歌声とそれに続いて割れんばかりの拍手が聞こえてくる。]
こうしたときこそ、迷える子羊たる皆さんを、我が主の教えと救いへと導く道標たる私がしっかりしないといけないのですがね…。私の説教よりも、大衆歌の方がよっぽど街の人々の支えになっているようで…。
[…は僅かに首を横に振ると立ち上がり、椅子に置いていたガウンを手に取った。祭儀用の装飾が施されたガウンの重みが、…の腕に伝わる。]
···あの子に朝食を用意しなくては。
[…はいつもより重く感じられるガウンを左腕に抱えると、広場の喧騒に背を向け、教会奥の居住区ヘと歩みを進めた。]