[バレないと思ったのかねえ。
へらへらと笑っていたが、青年の手番になった途端、目つきを変えてその手を制止させた。
掴んだ手を捻り上げ、手の内から手札以外のカードがひらひらと情けなく散っていくのを見て、更に蒼くなるその顔が無様ったら。]
サーバーに不法アクセスして、カード追跡システムの無効化でもしたかあ?
パームの腕さえ磨きゃあ完璧だったなあ
[吸い殻を、煌びやかな場所に似つかわしいガラスの灰皿に押し付ける。
一周回って逆恨みに変わったのか、殴りそうな目で睨みつけてる青年に気付けば、笑いを噛み殺した。
怒りを顕わにするとは、まだまだ若いなあ。
相手をしてやってもいいが、さすがにここで暴れるつもりはない。あとでここのオーナーにこっぴどく叱られるだろうし。
常連ってほどではないが、たまにここで遊んでるのだ。自分まで出禁になっちゃ堪らない。]
稼いだ分置いてとっとと出ていけ
喧嘩したいならあとでいらっしゃい
小僧っ子の腕ぐらい、軽ぅく捻ってやるよ
[どうせこのままじゃあ、奴さんの気が晴れないだろうし。
運動するなら相手がいた方が楽でいいや、なんて。
売り言葉のない喧嘩に買い言葉。煽り文句と一緒に手を振って、連行される青年をお見送り。
さてポーカーを再開しようか。と席に着こうとしたら誰かに無言で肩を掴まれた。
どうやらいつもの堅物な監視員に見つかったらしい。勤務中だろって言いたいのが、見なくてもわかる程度にはサボってる。]