っ!!
[反応しきれなかったと言えば、それまでだ。
目を見開いたそのときには、人間の身体能力を遥かに超越したスピードとともに、鋭い爪に首が捉えられていた。>>282
ぐっと込められる力に、逃げようともがく。]
っ、げほっ……
[何とか抜け出して、吐きだした血交じりの唾液。
首筋にはその鋭すぎる爪痕で抉れ、血が流れていることだろう。
しかし、その血はふとした瞬間に、……止まる。
それと同時に、人狼のような毛におおわれた耳が現れて。
犬歯は牙のように伸び、すぅっと切れ長に伸びた瞳孔は、その動体視力を跳ね上げた。
手の爪が鋭く伸びて……ナイフを握り込む掌に刺さる。
それでもナイフを離さなかったのは……。
"人間"としての、最後の矜持。]