[鹿に跨がる麗人が袖を翻せば、新緑の色を宿した蝶が舞う。>>5
薄紅色の細かな粒子がきらめく様は美しく、見惚れるうちに痛めた手首の強ばりがほぼ抜けていることに気がついた。]
美しい御技だ。
気遣い痛み入る。
[癒やしの技に礼を述べ、呼び合わせた絆の力については穏やかに頷く。
喪っていたらという仮定にも、真剣な眼差しで肯定した。]
あのとき彼を喪っていたら、私の心も半ば死んでいただろう。
たとえ一人でも諦めはしなかっただろうが、
―――無事でいてくれて本当に良かった。
[最後の言葉だけは、胸のすべてを吐き出すような息と共に漏らす。]