――翌朝――
[サシャ=マリア・コーエンの死は、早朝の間に広まったことだろう。
カスパルはサシャの直接の上官に謝罪をしに行き、己の不手際と悔やみを述べ、今後の調査協力を依頼した。
容疑者が自害したという知らせは、駐屯地の空気を弛緩させるに十分であった。
それも――第二の犠牲者が発見されるまでだった。>>3
知らせを受け駆け付けたカスパルは、赤にまみれて白さを一際増したフィオンを眼前にして顔をゆがめる。
知っていても衝撃が弱まるわけではない。
武装していたこと、心臓を失っていたこと、牙で食い破られていたこと。
以上から犯人は狼化病の発症者だと断定した。]
現場は書庫、だな。
おそらく、本人が自主的に来たのだろうが……。
[昨日の彼の願いが脳裏をよぎる。>>2:64
検死を担当した軍医からの報告を聞きながら、遺体の再確認を頼めばあっさりと了承され何を思ったのか、席まで外された。]