人狼物語−薔薇の下国

168 グラムワーグ・サーガ


タイラント テオドール

[ 男は肩で息をつきながら、
 地面に突き立てた剣を支えに、かろうじて崩れ落ちるのを堪えている
 ふいに身を折って咳き込む。
 剣タコのある厚い手に、薄明にも鮮やかな赤が散って、
 すぐに雨に流れて消えた。
 じわじわと、衣服に赤が滲む。背から脇腹へ抜ける、裏切りの傷。 ]

[ ……妙だった。
 男の周囲に足跡はない。
 ぬかるむ地面に足跡を着けずに、門まで行くことなど不可能なのに。
 異常だった。
 男の衣服を染め行く雨の染み。今の今まで濡れていなかった証。
 ……三日三晩続くこの雨の中、
 何もかもがみすぼらしく濡れ、うなだれているというのに。

 まるで、
 彼の傍にそびえたつ、その門から、
 今まさに出てきたとでもいうように。 

 ……いつの間にか、そこに居る。 ]

(8) 2014/03/26(Wed) 22:49:45

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