― 北へ ―
[激闘の場を離れた第二艦隊は最大戦速で北西へ、"水路"入り口へとひた走っていた。
跳ね馬もかくやという荒さで波の上を鋼鉄の船体が弾み、飛沫を上げる。並走する水雷艇などは時折巡洋艦の引き波に煽られて、危うく距離を離さねばならないほどだった。
そうして突き進むこと暫し、ようやくウルケルの小型戦艦を擁する艦隊、その最後尾を射程へと捉えつつあった。]
射程に入り次第、砲撃開始。
[命令に従って、主砲が砲身を巡らせる。
左梯形陣へと変化して射会を確保した3隻は、順次主砲を放ち始めた。
射程距離ぎりぎり、かつ互いに高速で動く艦同士である。
命中率は望めないが、これはいわばあいさつ代わりだ。
初撃を放った砲塔内では次弾装填が慌ただしく進められ、砲撃長は観測データと格闘して方向・仰角の修正値を叩きだす。]*