[語られずとも、分かることがあった。
彼がどこに行くことを望んでいたのか。
それはきっと、昨晩聞かせてくれたことから、
――どこかしら、察していたような気がする。
議論の様子が
そのための振舞だったとまでは分からないけれど。
だとしたら、
“人狼に抵抗したのは、なんのためか”
その傍らにある小刀を、拾い上げた。
そこには血が付いていて、
茶色の体毛が残っている。>>2:524]
……ほんっと、
お前ってやつは。
[これは彼が残してくれた手がかりだ。
決して無駄にするわけにはいかない。
血も茶色の体毛も落とさぬように、
慎重に回収する。]
