[残り数歩の距離は詰めないまま対峙する。>>4
視線が前より近い気がするのは“私”の記憶のせいだろう。
目を向けても記録庫の時のように逸らされなければ
その距離のまま話を続けた。]
私ね、知りたいことがあるの。
狼になった羊が、狼の気持ちを知れるのかどうか。
今なら知れる気がするから。
[“私”が死ぬ時にそう願ったのかは知らない。
だけどそれは叶ったから。
この言葉の意味をカスパルは察したかもしれないが
少なくとも黙っていてくれると思っている。
罪悪感につけこんでいる自覚もあるし否定もしない。*]