ー宿屋ー
[二人で一つの部屋に入れば、微かな風呂の気配にすん、と鼻を鳴らす。
落ち着かない様子で部屋の内装を確認した。
落ち着かないのは、宿に立ち寄った"理由"のせいでもあるのだけれど。
不意に、名前を呼ばれて肩が強張る。
いつものやり取りを行う前の声だ。
意志の強そうな眼に引き摺られるように、相手の側まで近づくと、眉を寄せる眉間を親指で撫でた。
代わりにコンスタンツェの眉間に皺が寄るのが分かる。
優しく、冷たい指が相手の頬を包み込む。
相手の脚の間に膝を滑り込ませて、身体を起こせばベッドが軋んだ。]