―フィオレンザであった頃―
[幼い頃から、人形遊びよりも棒切れを振り回すのが好きだった。
騎士団長を務めていた父に兄や弟と一緒に教えを乞うて、その大きな手で撫でられるのが好きだった。
‘フィオレンザなんて似合わない。フィオンでいい。’
そんな風に言って、男の子と遊んでいた少女はじゃじゃ馬と呼ばれていた。
泥だらけになって帰って来る娘の姿を見て
母は嫁の貰い手が無くなると嘆き、父は騎士になればいいと豪快に笑っていた。
兄や弟と同じように己も騎士になるのだと息巻く少女は成長し、やがてある事に気付く。]