[“私”の最期を思い出してから
少しずつ違う記憶が混ざるようになっていた。
少女に癇癪を起こして突き放したものであったり
間違いを恐れる心細さであったりと、
辛いものが多いけれど、それが全てでもないと思い出している。
その記憶に絆されているからだろうか。
それとも同じだけど違う存在だからだろうか。
胸を抉った人を前にしても、恨みや負の感情は浮かばない。]
私が気にしないと言ったなら、
亡霊の“ドロシー”は消えるのかしら。
[カスパルがそう望むなら許しを口にしてもいい。
死を間際にして“私”が思った事はあったのかもしれないが、
思い出せない以上それは私とは別の存在が抱えるものだ。
だとすれば、私の許しなどカスパルにとっては
気休めにもならないだろうとも思う。]