[それから彼を叩き起こして、さぁカバンに荷物背負って
村を出るぞ、と告げることでありましょう
ディーターが回収しなければ
議事録は置いたまま。カタリナの部屋の、人名の沢山滲んだ紙も
真実は雪と共に溶け消え
100年前の様に起こった惨劇の一部だけが遺される
後に、赤毛の司書の娘は
父親知らぬ幼い娘に100年前の議事録を
あれば、自分の娘時代に起きた議事録を渡して
或いは、大人になったリーザとペーターが自分の子供たちに
或いは、滅びたこの村を復興しようとやってきた人たちの子供らに
寝物語の一部や噂話の1つとして
村の人々は語り継いでゆくことでしょう
――奇しくもそれは、白銀の狼が望んだように
風化しきれぬ記憶となって、人々に静かに刻まれてゆくのです*]