―月夜の森―[日が落ちれば、それは人狼の時間。服を脱いで、きちんと畳んで肩掛けカバンに仕舞い。マントだけは羽織ったまま、ヨアヒムの目の前で、ゲルトの姿が変貌していく。月の光が瞳に宿り、氷青の瞳は蒼銀に輝いた。鼠色のマントを羽織りと肩掛けカバンを身体に引っ掛けている黒い狼は、尾を振ってヨアヒムの顔を舐めた。怖いものじゃないよと安心アピールする為に。背にヨアヒムをしがみつかせれば、走れるだけ走った。眠ってしまうようなら、落とさぬよう、スピードを落とし、森の中を駆けて行く。]