― 回想:70年前 ―
[あれは普通の吸血鬼とは違い、何かの理想や悲願を持つ、あるいは持たされた存在であることだけはなんとなくわかっている。
それがその体たらくというのは、見ていてつまらぬものであった。...にとってアイリス>>1:686へと語った小石以下の価値を持つものだった。
これで無礼でもすればためらいもなく殺していただろうが、機械のように生きるものはそのようなことはなく、視線に入るだけで歯痒い思いを抱かせるものであった]
これをやろう。味覚の一つでも楽しむがいい。
[戯れのように恩寵として授けたのは、よく出歩く市場で買った飴の一つ渡した。
何かが呼び覚ませばまだ世界は面白くなるという思いの気まぐれの行為。
それが別の何かを呼び覚ます切欠になったとは知らず、ステファンと少女を結び合わせるたとは思いもせず、そのような出会いがあったことも知らない。
ただ真祖にとって一つ世界が面白くなったことだけが確かなことであった]