[だが近年の研究で、ウェルシュの遺体はそこには埋葬されなかったことが明らかになった。それでは彼は、一体どこに葬られたのか。
墓は依然として判明していないが、彼のものだとされる史料は僅かに遺されている。主には行政に係る文書だが、中に面白いものがある。絵だ。
子どもの落書きのような絵、恐らくは戯れに鳥を描いたものだろう>>6:83
稚拙な線のそれは伸びやかで、描いた者の憧れを感じさせるかのようにも見える。片隅に描かれたサインは確かにウェルシュのものと認められるが、芸術的価値を有しないこの絵を、彼は何故持ち続けていたのだろう。
一説には、彼は2年後に死んだのではなく消えたのだ。という説もある。些か荒唐無稽ともいえるその話は、歴史にありがちな浪漫ではあろう。
けれどもし、それが本当の話なら。
彼は、彼の憧れを叶えることが出来たのかも知れない。
『ラメール、暁天の最後の歴史』より抜粋 **]