― 最期の記憶 ―
[問いかけに笑みを浮かべて首を振る。
愛し子を食べた羊の気持ちはついぞ分からなかった。
だけど、それでいいのだと今は思う。
来世でも優しい人にはなれないかもしれない。
“私”の望む人にはなれないかもしれないけれど。]
分からなくてよかったの。
そう思えるうちに死にたい。
これ以上誰かを私の欲に巻き込む前に。
……なら、乗りかかった船と思ってここにいてくれる?
さすがに一人で死ぬのは少し淋しくて。
[死体を発症者として公表するかどうかはカスパルに任せよう。
望むべくは彼の今後に支障がないように進めてほしい。
悔やむような表情に努めて柔らかく返したのは
二度も自分の死に立ち合わせてしまう事で
暗いものを抱えてほしくないからだ。>>0]
私の選んだことだもの。
引き金は誰にも譲ってはあげないわ。
[期待していないだろう願望に、微笑んで答えた。>>1]