―昨日・屋上→どこか→ソマリの部屋―
[レトが立ち去ってからも、しばらく屋上に留まって暮れゆく空を眺めていた。時折手を伸ばして、指先や掌で呪術蝙蝠と戯れる。
その顔には少し穏やかな表情が戻っていた。
どれほどそこで過ごしていただろうか…
もう一人の鑑定師の名乗りはまだ耳に届いていない。
やがて立ち上がると、目を閉じてその身を変化させる。
―その姿は小さな一匹の蝙蝠へ。
城内のどこにでもいる目立たない姿と同じ形に変わる。
目指す人物の元へ。その周囲に留まり、彼の回りに他のイド達が集まるようなタイミングを見計らって、群れに紛れてその手首をかすめるように飛来する。…数滴、かすっただけの接触で口に入ればそのまま城に戻り。
ソマリの部屋に向かう。その背中の翼に戯れるイドに混ざり、ソマリがこちらに気付くなら、そのタイミングで変化を解くだろう]