ふふ、そう畏まらないで。
[ 下馬して、丁重な礼をとる王子の姿に>>2動じることもなく、大鹿の背に腰掛けたままで、ひらりと袖を振る。
その袖に呼ばれたように、薄緑の翅の蝶がクレステッドとヴィンセントの周囲をひらひらと舞って、桜色の鱗粉を撒き散らした。
その鱗粉に触れれば、二人の傷の疼きが僅かに軽減したことが判るだろう。 ]
貴方達を呼び合わせたのは、互いの絆が捻れてはいても切れてはいなかったからだからね、それは森の主の力じゃない。
[ だから礼は不要だと、自分が、その主であるかどうかは明言せぬまま、そう告げてから、後ろに控える従者に、視線を向ける。 ]
絆の片割れを喪っていたら、希いを叶える機会も喪われていたかもね?
[ にこりと笑ったその瞳は、僅かに鋭い光を宿している。 ]