「とはいえ……あんたさんらにとっちゃ理不尽でも、『ここ』を見ちまった以上は、避けて通る事はできんのですわ。
自分らの主……『始原の秩序』たる、『秩序の王』にとっちゃ、『混沌の闊歩する世界』は、あっちゃならんモンなんです」
[淡々と言い切った後、影の魔神ははあ、と大げさにため息をつく]
「……ゆーか、しょーじき自分、気ぃのらんのですけどな。
主の対の御方が遊んでるせいで、いらん手間くっとるよーなもんですし」
[ぼやくように吐き捨てる瞬間、影の視線は思いっきり遠くを見ていたが、すぐにそれは来訪者たちへと戻り]
「……それでも。
自分、主の『影』ですんでな。
……主を阻む事はできませんし、他者がそれをやるのを見過ごす事もできませんので、ええ。
……殺らせて、いただきますわ」
[にっこり笑って物騒な事を言い切った後、影の魔神はぱちん、と音を立てて指を鳴らす。
応じるように、異国の妖魔──鬼や妖怪と称されるものによく似た姿が、大広間のあちこちにわき出した。**]