[世話係は「可哀想に」と言ったが、アレクトールにはその同情が理解できなかった。] 嫌な声だ。[吐き捨てて横を向く。それ以来、同じ場所を通りかかっても、狂った旋律を聞くことはなかった。航行中の船から人が消えるということはあり得ない。ならば──あの子は死んだのだろう。狂った歌を皇太孫に聞かせないために殺されたのかもしれない。そんな憶測が過る。子供の名は密やかにアレクトールの胸の裡にしまい込まれ、戒めとなった。*]