……ああ、音楽家、なのか……
[あの戦闘の中で、脚や肩の負傷を気遣ってもらったことを思い出す。
あのとき自分は咄嗟に『一曲くらいは弾ける』>>1:250と言って、『楽しみにしています』と彼は応えた。>>1:259
言葉の唐突さに戸惑う様子もなく。
壁に置いた楽器を見たのかもしれないし、それ以前にも、もしかしたら何か切っ掛けがあるのかもしれないが……
此方もそうであると、気付いていたのだろうか。
いまこうしてひどく案じてくれた様子だとか、そんな彼自身の状態であるとか、その全てが、思考の中で繋がってゆけば。
左手を、爪が食い込むまでぎり、と握りしめて。
やがて、彼がカークと話終えるのを待って、口を開く]
音楽が好き、か……
それは、俺もだな。
……お前の音は、優しいんだろうな。聞いてみたい。
[それは、どうしようもなく、零れ落ちるような言葉であったと思う。]