ああ、かの御仁の行方だが、探しまわらずともいい。 おれは聞いている。 西の砦へクロード君に会いに行くと。 あの方のことだ、物騒な目的であるものか。 ふふ、顔も見せずにと不貞腐れるなよ? ソマリには危うさを感じなかったという信用の裏返しなのだから。[それでも、クレメンスの出発前に会話することができた自分にちょっとした優越感があるのはしょうがない。クレメンスは無自覚に人タラシだ。懐に人を引き込み魅了する。味方《ファン》になってほしいと彼を口説いたが、今や彼の信奉者《ファン》になっているのは自分の方だ。自覚している。どうやら、シメオンもそうらしい。相変わらず彼はカナンに近しい魂の双子だ。]