― カレン・騎士公館 ―[イングリッドが語るテオドールの姿は、自分の知るものとはかけ離れていた。でも、それこそが彼女の知っている実像なのだろう。”彼”のために。イングリッドの言葉の端々には、その想いが溢れていた。] …そっか。 人間、か。[真面目でまっすぐな人間が、どうして人間の半数を殺そうとするに至ったのか。彼女の言葉に、いくつも答えの欠片が隠されているように思う。なにから助けたいのか。その答えはこの手に無かったけれど、求めにうなずくのにためらいはなかった。]